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法人としてスタートすることになった
アソシアソン・コムニダーデ・ユバ

 ユバ農場が創立七〇年を迎えるに当たってアソシアソン(公益法人)としてスタートすることになった。法人手続きは現在進行中であるが、すでに二〇〇三年一月から法人としての形をとっている。
 一九九七年の産業組合の倒産でユバは思いがけない負債を抱えることになり、この五年間、支援者も含めて様々な対応が検討されてきた。法的対応を担当する中川弁護士によると、問題はユバが法人でなかったため、名義人個人の負債となっていたことだった。銀行と折衝の結果、ユバを公益法人として登録することによって、負債の相当額を銀行が寄付する形で解決したとのこと。
 こうした動きの中で、安心したのか一月に長老の箕輪謹助が亡くなり、九月には代表の弓場哲彦が亡くなった。
ユバでは故人の意志を受け継いで三世代目のツネ(弓場常雄)、クマモト(熊本忠博)、ツジサン(辻義基)、マリアン(今本駒子)、コッピン(弓場耕)、ヒョウ(弓場的)、カッチャン(弓場克彦)らが中心になり、これにイサム(矢崎勇)、ダイゴ(弓場大五)、ウミ(辻海)サキ(熊本早)ら四世代目の若手が結集して再建に取り組むことになった。とにかく、弓場の現状をみんなが把握できるよう、毎月経営会議を開いて話し合っている。会議は一部の役員だけでなく、誰が参加してもいいことになっている。
 すでに中心になって再建に取り組んでいるツネとクマモトに抱負を聞いてみた。

 心配かけたけど。みんな元気でやってる。もう何年も前から差し押さえの話は出てたんだ。最初の時は競売にかかったけど買い手がつかなかったんさ。だけど、今度は危ないと思ったから、おれたち日本に二年ばかりデカセギに行ってきた。
 もう潰れても仕方がないとは思ってたけど、やっぱり金のことだけで潰れるのはいやだよね。サンパウロの人たちも心配してくれて、金を出してくれる人もいるんだけど、ここは俺たちが生まれ育ったところだから、自分たちの力で何とかしたいと思ってる。
 マコト(中川弁護士)がいろいろやってくれて、ヤマをアソシアソンにする見通しも立ったんで、今年の一月にみんなで話し合った。まだ認可は下りてないけど、たぶん大丈夫。これまでは何から何までみんな哲ちゃんにおんぶしてたけど、今年からアソシアソンらしくやらねばと、マコトに指導されながら役員が責任を持って経営方針を立て、毎月それを検討してる。先月、初めて黒字になった。
 ヤマ(ユバ農場)が抱えてる問題は金のことだけじゃない。若い者もどんどん育ってきてるけど、教育のこと、結婚こと、いろいろ考えて行かなくてはならない。ただ経営的にうまくいったところで、ヤマらしさがなくなったらしょうがないからね。 (要約・木村快)

ヤマはみんなから愛されてる  中川 誠(弁護士)
中川誠(弁護士)
 ぼくと哲ちゃん(代表・弓場哲彦)とはいとこ同士です。哲ちゃんは大変だったと思うね。よく頑張ったね。差し押さえ問題が出たとき、哲ちゃんから相談されて銀行と話し合った。借金のかなりの部分は銀行が寄付してくれることになったけど、そのためにはヤマを法人にしなければならない。それでぜひヤマを新しく変えていきましょうと、書類を作っていたところで哲ちゃんが亡くなった。
 だけど、ヤマ(ユバ農場)は絶対つぶれることはないです。なぜなら、ヤマを育てて来た先輩たちはみんな夢を持っていたからね。それがちゃんと受け継がれてる。差し押さえの対象になった借金はツネやクマモトたちが出稼ぎに行って支払いました。もう大丈夫です
 ぼくが一番心配したのは、経営を合理化することばかりに心を奪われて、ヤマの精神を失うことでした。でも大丈夫。土地が差し押さえられるかどうかで騒いでる中でもクリスマスにはみんなで歌ったり踊ったりしてるでしょ。みんな朗らかに生きてる。
 ヤマの連中は絶対人の悪口を言わないし、人を病気だとか年をとってるとかいうことで差別しない。人は誰でも大事にされる権利がある。お客さんはどんな偉い人でも貧乏な人でも同じように扱う。それがヤマの精神です。
 だから、ヤマの連中はみんなから愛されてる。みんなから愛されてることがヤマの力になっている。
 ヤマはこれからですよ。大事なことは夢をなくさないこと。難しい問題はいっぱいあるけれど、ぼくは信じてる。
キンチャン(長老・箕輪謹助さん)も哲ちゃんも安心して天国に行ったと思っている。(要約・木村快)


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