ミツコは日系ブラジル人。祖母から、日本は人々が山や森や水に囲まれて暮らす国だと聞いていた。その祖母も故郷の村の「約束の水」という湧き水を恋しがりながら息をひきとった。意を決して祖母の国を訪ねてみたが、そこにはもう祖母から聞いていた日本の姿はなかった。山間地にある祖母の故郷も、もう無人地区になっていた。
ミツコはそこである家族の一団と出会う。家族に無断で山に戻ってきた年老いた父親を連れ戻すのだという。だが、説得する家族には心を閉ざす老人が、なぜかミツコのくちずさむ歌に子どものころの記憶をよみがえらせていく。
老人はミツコのために「約束の水」を探してやりたいと思いはじめる。ミツコの祖母が歌っていたという歌の旋律をたどりながら、老人の心には在りし日の豊かな村の暮らしがよみがえってくる。老人の家族や知人も、とまどいながらも人と自然のかかわりを呼び覚まされていく。
山中三郎 | 三郎の息子 啓一 |
啓一の妻 よし子 |
日系ブラジル人 ミツコ |
熊倉正博 | 寺崎昌広 | 木下美智子 | 真知尚子 |
三郎の孫 靖夫 |
靖夫の友人 ミキ |
林業作業士 竹田 |
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小林大輔 | 東 志野香 | 中村保好 |
作・演出 | 木村 快 | 音楽 | 岡田京子 | 舞台美術 | 出川三男 |
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舞台監督 | 澁谷博史 | 照明 | 木村康恵 | 音響 | 卜部美佳子 |
演出助手 | 西河 大 | 演出助手 | 伊東昌彦 | 制作 | NPO現代座 |
演劇は見て楽しむ娯楽だと思われがちですが、演劇のほんとうの魅力は、劇場に集う人々が、こころの中で共通の体験を味わうことにあります。
もともと演劇はこころの共鳴を起こす芸能でした。人が劇場の中で身を寄せ合い、舞台の俳優たちの行動を無心に見つめるとき、日常生活ではなかなか体験できない、こころの共鳴を起こしています。演劇にはこころの共鳴を通して他人の生活を体験し、自分自身のあり方を確認する魅力があります。
世の中の暗い出来事ばかりが画一的な情報で伝えられる社会では、一人一人の人間的な努力がひどく無力に思えてきます。未来につづく子どもたちのためにも、現代に生きる人間にふさわしい希望を持ち、希望に向かって生きて行ける自分でありたいものです。
NPO現代座の願いは、心の共鳴を大事にする人々と一緒に現代を考え、新しい生き方を見つけだす演劇を創造しつづけることです。それがNPOらしい演劇活動のあり方だと思うからです。