homeHome
移住史ライブラリIndex | 移住年表 | 移住地図 | 参考資料

ユバに起こった奇跡

弓場勝重(かつえ)

弓場勝恵 一九四六年ユバ生まれ。(弓場勇七女) 歌うことが非常に好きで、姉不二子の指導、また機会有る毎に専門家の指導をも受け、弓場のコーラスのリードヴォーカル的存在である。最近は主に音楽関係の公演プロモート活動にも積極的で、農場に於ける外部団体による演奏会等を頻繁に企画している。更に近年、農場の歴史を子供たちに伝えたいと言う思いから絵本を作り始め、九十三年にポ語対訳の「やまのおはなし」を自費出版し、現在は、母の歴史を綴った「ハマの大きな樹」という絵本を出版計画中である。

 今日はアッコさんの誕生日です。そして、私たちのユバ・バレエ団の四十五周年の年でもあります。この間、新しい長屋が完成し、一時、稽古場に詰め込まれていた荷物が運び出されました。そのガランとした稽古場をアッコさんが掃除し始めました。古壁に空いた穴を一つ一つ埋め、きれいにペンキを塗り‥‥‥。私は、「もうすぐ壊されるのにどうして?」と訪ねました。アッコさんは一言、「ここには私の思いがあるのよ」と答えました。この言葉を聞いた瞬間、私の中に、初めて庄さん(彫刻家小原久雄)とアッコさんがユバに着いた日のことが甦ってきました。1961年、小原久雄・明子夫妻を出迎える中林敏彦氏と弓場勇(後)
最初にユバに着いたときの、タイトスカートにハイヒールのアッコさん。客部屋の窓に佇んでいたアッコさん。「なんてきれいな人だろう!」と思ったこと。初めてジングルベルの音楽に振りを付けてくれたこと。側で見ていた弓場さんが感動し、コーヒー畑だった所を整地し、ユバのみんなを総動員して舞台を建てた日のこと、弓場さんといつも話し合っていた庄さんとアッコさん。そんな様々な出来事が一瞬にして私の中に甦ったのです。
 四十五年は本当に長い年月です。自分の一生をかけて私たちと一緒にユバを作り上げ、わがままな私たちをここまで引っぱってきてくれました。そう思ったとき、唯々ありがたく、胸が一杯になりました。
 ユバを創設した一世たち、そして、庄さんとアッコさん、二人の思いが重なって実り、ユバ・バレエ団が生まれたのです。今はその孫、曾孫たちと一緒に、アッコさんはまだ舞台に立っています。ユバのバレエは舞台を通し、多くの人々に喜びと感動を与え続けています。このことは、ユバにアッコさんたちが来なければ出来なかったことです。アッコさんの命の躍動を感じながら、私たちも命を燃やしていきたいと思っています。
 弓場勇の親友だった、日伯毎日新聞の社長中林さんは、アッコさんと庄さんのことを「奇跡の人」と言ったそうです。本当にユバに奇跡が起こったのです。弓場勇を始め、ユバで生き、亡くなっていった人々、その笑顔が浮かんできます。今日はアッコさんの素晴らしい日です。神様から命を授かった日です。お誕生日おめでとうございます。アッコさん本当にありがとうございます。私たちは幸せです。ありがとう!

飼料袋で作った衣装にデザインする庄さん バレエ初舞台・初めて着た舞台衣装

 次へ


back home