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アリアンサの子供達

第一アリアンサ日本語学校 渡辺久洋

多忙な子供達

アリアンサの主産物ゴヤバ(グアバ)の選別作業をする子どもたち  前に書いたかもしれないが、アリアンサの子供達は日本の子供達に負けず劣らず忙しい。朝七時十分から十二時までブラジル学校、午後は日本語学校、それにパソコン学校、英会話学校に通っている子も多い。週一回の野球の練習や陸上の練習をやっている子もいる。
 家にいるときは畑仕事、卵の選別等家の仕事の手伝い、更に母親が日本に出稼ぎに行っているため、家事をしている子供もいる。休みの日でも青年会の仕事が入っていたりする。このようにアリアンサの子供達はやらなければいけないことが多く、あまりのんびりする時間が無い。
 金曜日の夜にバスで六百q、七時間かけてサンパウロに行き、土曜、日曜と陸上大会に出場。その夜にサンパウロを発って、月曜日の早朝アリアンサに着き、そのままブラジル学校へという時もある。
 アリアンサの子供達を見ていると、子供はエネルギーがあって本当に元気なものなんだと実感する。いつも元気で生き生きしている。どうしてそんな生活をしてて疲れないのかと不思議なぐらいである。僕にもそういう時代があったのだろうか……

敬語のない環境

 第一アリアンサ日本語学校の生徒は六才から十八才の三十五人で、休み時間にはみんなでサッカーをしたり、十五才の子が六才の子の相手をしてあげたりと、みんな仲が良い。ブラジルでは日本のように先輩後輩の隔たりが無い。
 年上だから威張るとか年下だから年上に逆らわないとかいうことはない。だから年に関係なくみんな仲良くなれる。これはとてもいいことなのだが、その反面、年上の人を敬うという気持ちがないように思える。
 しかし、日本語学校のいろいろな活動において、大きい子が小さい子を手伝ったり面倒を見たりすることによって、自然に年上の子を敬う気持ちができてくるのだと思う。それは、十四才以上の未婚者で構成される青年会の活動においても同じである。
 年令に関係なく仲が良いのもいいが、年上の人に対して敬意を払うのは日本人の良さであり、大切なことだと思う。
 休み時間にこんなことがあった。「せんせ!」と子供が呼ぶので「何?」と聞いたら「せんせ、おいで。」
 また授業中に勉強している子供が「せんせ!」と呼ぶので、「はい、ちょっと待ってね」と言ったら、その生徒は、「せんせ! せんせ、ちょっと」「はい、わかった。待って!」「「せんせ! ちょっと来い。」
 先生に向かって「おいで」「来い」などとバカにしているように思えるが、そうではなく、相手によって表現を使い分けるということができず、ただふだんよく聞く表現を使っているだけなのである。
 ポルトガル語では(VEM)だけなのが、日本語では「来て」「来て下さい」「来い」「おいで」「来なさい」など言い方がたくさんある。
 子供達には年上の人を敬う気持ちをもってもらいたいが、それと同時にこのように相手によって適した言い方ができるようになってほしい。そうしないと、子供が『お願い』という気持ちを持ちながらも「先生! 僕を手伝え」なんていうことになってしまう。

言葉以外の教育も

 最後に、子供達が日本語学校をどう思っているのか?嫌だ、疲れる、と思っている子もいるだろう。いるどころか、少なくないような気がする。
 「学校やめたい」と日本語教師にとって一番つらいことを言ってくる子もいるが、そんな時はこう答える。
 「日本語学校にいるおかげで体育祭や林間学校やお話発表会など、ブラジル学校ではできない体験ができるでしょ。それに色々な学校の生徒とも友達になれるし。楽しいことがたくさんあるよ。」と。
 先日行った終業式でも言ったのだが、日本語学校では嫌なこともあれば楽しいこともある。でも両方とも思い出になる。勉強は面白くないだろうし、勉強したことは忘れてしまうかもしれない。でも思い出は忘れることなくずっと心に残る。だからこれからも日本語学校で思い出を作ってほしい。
 日本語学校はただ日本語を教えるためだけの場所ではないのだから。


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