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アリアンサをたずねて 5

 坂本農場

 昼食後、教会を失礼して、隣町のガラサイという所で農場を営んでいる坂本イサオさん宅を訪ねる。坂本さんは祖父母と共に栃木県南那須郡大金町から移住してこられたのだそうだ。
 イサオさんの弟・坂本進さんはサンパウロ市内で薬局を開いていて、現在、栃木県県人会の会長である。坂本イサオさんは、三日前に胆石の手術をして退院したばかりだというのに、ちっともそのようには見えず、家の中を案内してくださったり、奥さんと一緒にいろいろな話しを聞かせてくださった。やはり移住して苦労を経験された方は、病気に対する気構えも違うのかと、感心してしまう。しかし、さすがに農場までは案内できないからと、イサオさんの代わりに奥さんがわれわれを案内してくださった。
 トラックに乗り換えて着いた所は、あっ、と驚くような広大なパイナップル畑。畑一面にパイナップルが列を作って一本一本、葉を広げていた。ホルモン液を噴霧することによって結実の時期をずらし、生産調整をしながら出荷しているのだそうだ。その広さは一三五アルケール(一アルケールは七三〇〇坪)だそうで、日本にいては見られないような、まさに遥か見渡す限りのパイナップル畑だった。
白い牛  次に案内されたのはカウボーイ(ガウチョといった方が似合う)のいる、これまた広い牧草地である。トラックで牧草地に入っていくと、遥か向こうから、例の背中に癌のある白い牛がぞろぞろと集まってきた。坂本さんは、ここに約五〇〇頭の牛を放牧している。良い種牛を交配して子牛をとり、一年半ぐらいで商品として出荷するという。それをガウチョがたった一人で管理しているそうだ。
 白い牛達はわれわれの訪問に好奇心をもったのか、側を離れる気配はない。よく見ると、茶色の牛や黒い牛もいる。黒い牛が種牛で、茶色の牛はその交配で生まれた子供であった。そして背中に癖のあるのは牡牛だった。
 知らないことだらけで感心していると、言葉の通じないガウチョさんは自分の乗っていた馬に私を乗せてくれた。私が馬に乗ると、牛達は益々好奇心を持って私を眺め、ゾロゾロついてくるではないか。動物好きの私は牛の群れに囲まれてうれしい気分になったが、たった一年半で肉にされてしまう彼等の命を思うと、気持ちは複雑でもあった。
 パイナップル畑と牛の牧場を見学させていただいた後、永田さんは坂本さんの奥さんと最近の農業経営についてしばし語り合っていた。坂本さんの奥さんは、永田さんが昔「4Hクラブ」で指導されていた頃の生徒さんだったのだそうだ。坂本さんは着実な農業経験をもとに大農場を経営するまでになったのだろう。永田さんも嬉しそうだった。

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