畑は自分たちで食べるだけの土地があればよい
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大豆の収穫。豆腐、味噌、納豆は自家製。中学生以上になると一緒に農作業に参加。 |
老人たちが丁寧に剪定すると、やがて花が咲き、グアバやマンゴーが豊かに実る。摘果は女性たちの仕事。 |
日中は大人も子どももそれぞれに応じた農作業をする。機械化は極力避けている。 |
かつて日本移民は原始林を開拓しては無肥料で収穫出来る間だけそこへとどまり、土地が痩せると次々と場所を移動し、原始林をつぶしていった。弓場勇らが一番恐れたことは、原始林の破壊もさることながら、定着性のない農業は文化を育てることが出来ず、日本移民の未来を失わせることだった。
弓場農場はこうした略奪農業を施肥農業に転換させるために、養鶏運動を起こし、無償で雛を配り、無償で鶏舎を建てる活動を続けた。戦後の混乱期は多くの人々を受け入れ、南米最大の養鶏場と言われた。しかし合理的経営を求める銀行と対立し、一九五二年に破産。弓場と同志たちは農場を追われる。日本人移民社会は弓場農場は幕を閉じたと信じた。
だが、弓場一党は裸になってもなお村人に施肥農業と協同による村の更生をよびかけつづけ、文化センターとなるべき協同農場を再建。現在に至っている。
ブラジルの農業は投機的な傾向が強く、売れる農産物を大量につくらなければ成り立たないと言われる。だから、個人の農家でも農地は二〇ヘクタールから四〇ヘクタールくらいは所有している。
ユバは現在二十五家族、一歳から百四歳までの六〇人が生活しているが、果樹園、牧場、作業区、居住区、文化施設を含めても一〇〇ヘクタールしかない。生活用の畑は四ヘクタールもあれば十分だという。文化施設としては大食堂、劇場、レッスン場、図書館、移住記念館、、彫刻庭園、滞在者用ゲスト・ハウスを持ち、七・三ヘクタールの原生林を保全している。ブラジル人はこんな狭い土地で六〇人から八〇人が暮らし、公共施設を持っていることに驚く。
ユバが必要としているのは自然とともに生きることであり、農業は金のためではなく、大人も子ども一緒に働き、人間らしい文化を守るための営みである。このため、機械化は極力避け、農場員が必要とする作物中心に、日本的な集約農業で一緒に働くことを大切にしてきた。
◎主要農産物
- グアバ果樹……2000本
- マンゴー果樹……350本
- スターフルーツ、パッションフルーツ少々。
- 椎茸(榾木)……3000本
- オクラ……2ヘクタール栽培
- 牛……70頭。肉牛で販売用だが、搾る乳は飲用、バター、チーズ等自家用。
◎自家用農産物
- 米……1ヘクタール、一年分には足りない。
- 餅米……1ヘクタール、餅、赤飯、おはぎ、五目飯など、日用的に使用。
- 大豆……1ヘクタール、餅、味噌、豆腐、納豆、醤油製作用。
- 野菜畑……1/4ヘクタール、自家用には充分な面積で、余剰分はミランドポリス市の知人友人、病院など施設に寄付。
- タケノコ……保有林で育成している。塩漬けにするなど保存食的に使用。
- コーヒー……自家用として200本。
- 豚……60頭。石鹸は豚油で製作。
- 果樹類の販売不可のものは、ジャムとして自家用、販売用として利用。
食品関係自給率は約70%
◎主な購入品
小麦粉、不足米、砂糖、塩、油、化学調味料、ガス。燃料に関しては廃材や保有林の倒木なども薪として使用。
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豚油で石鹸造り。滞在者の衣類、来客用シーツなどの洗濯は生活班が担当。 |
自分たちは飼育した豚を食べて生きている。子どもたちにとって最初の関門だ。 |
市場に出荷する果樹を選別し、箱詰めにする手伝いは小学生も参加する。 |
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